すべり症の考え方
ずれたままでも、痛みやしびれがやわらぐ理由。
変えられない「構造」と、整えられる「機能」を分けて考えます。
「また、ずれていくんでしょうか」
「先生、これ……また、ずれていくんでしょうか」
久留米市内の病院でレントゲンを見せられ、背骨が階段のように一段ずれた画像を指さされて、「腰椎のすべり症ですね」「年齢的なものです」「様子を見ましょう」と言われた。
その日から頭を離れなくなるのが、この一言だと思います。
朝、洗濯物を干そうと腰を伸ばした瞬間、腰から足にかけてしびれが走る。
立ちっぱなしがつらくて、台所に5分立つとシンクに寄りかかってしまう。
続けて歩けない。ゆめタウン久留米に行っても、以前のように一周できない。
夜は、ふくらはぎから足の裏のしびれが気になって、熟睡できない。
孫から「おばあちゃん、公園行こう」と言われて、笑ってごまかした日のことを、まだ覚えている。
そして何より──「このまま、もっとずれていくんじゃないか」。
その不安を抱えたまま、何年も「様子を見て」こられた方が、当院には本当に多くいらっしゃいます。
誤解しないでいただきたいのですが、レントゲンやMRIは、重大な病気を見つけるための、欠かせない大切な検査です。ずれが写っていることも、お医者さんの診断も、間違いではありません。
ただ、当院に来られた方に、検査を終えてから、私はこうお伝えすることがあります。
「ずれていることと、いま痛いことは、別かもしれませんよ」と。
たいてい、驚かれます。「え、ずれているから痛いんじゃないんですか?」と。
この「別かもしれない」には、日本の研究者が40年近くかけて積み上げてきた、確かな裏づけがあります。
なお、すべり症には大きく2種類あります。
ひとつは、若い頃のスポーツなどで背骨の一部に疲労骨折が起き、それが土台になる「分離すべり症」。もうひとつは、中高年になってから椎間板や関節がゆるみ、少しずつずれていく「変性すべり症」です。
50代以降で「すべり症」と診断される方の多くは、後者の変性すべり症にあたります。このページは、そちらを主にお話しします(分離すべり症については、末尾のよくあるご質問で触れています)。
腰椎すべり症とは、背骨の一つが、その下の骨に対して前方へずれた状態のことです。ただし、日本で145人を10年以上にわたって追跡した研究では、すべりが進行した方は34%で、しかも進行と症状の変化との間に相関は認められませんでした(Matsunaga 2000)。痛みやしびれの多くは、ずれた距離そのものではなく、その一か所がぐらつき、周りの筋肉が支えを肩代わりし続けていることから生まれています。ずれた骨は戻せませんが、支え方は何歳からでも整えられます。久留米市の腰痛専門整体院・整体ポノが、その考え方をお伝えします。
すべり症は進行するのか──ずれが進んだ人と、痛みが強くなった人は、別の人でした
日本で、手術をせずに経過を見た変性すべり症の方145人を、10年以上にわたって毎年調べた研究があります。ずれが進んだのは34%(49人)でした。ところが、すべりの進行と、症状の変化との間に、相関は認められませんでした(Matsunaga 2000, J Neurosurg)。「ずれが進む=痛みが強くなる」は、必ずしも成り立たないのです。
「様子を見ましょう」と言われて、何年も不安を抱えてこられた方に、まずお伝えしたいことがあります。
日本の大学病院で、手術をせずに経過を見た変性すべり症の方145人を、毎年、10年以上にわたって追いかけた研究があります。
結果は、こうでした。
10年以上のあいだに、ずれが進んだ方は34%。3人に1人ほどでした。裏を返せば、3人に2人は、10年たってもずれが進んでいません。
ここまでなら、「思ったより少ないな」で終わる話かもしれません。
本当に大切なのは、その次です。
ずれが進んだ人と、症状が悪くなった人は、重なりませんでした。
研究者は、こう報告しています──症状の変化と、すべりの進行との間に、相関は認められなかった、と。
ずれが進んだのに、痛みは変わらなかった人がいる。
ずれは進んでいないのに、痛みが強くなった人もいる。
さらに同じ研究では、最初に神経の症状(足のしびれや、力の入りにくさ)がなかった110人のうち、84人が、10年後も神経症状のないままでした。
つまり──
「ずれているから痛い」は、必ずしも成り立たない。
そして「これから、もっとずれて、もっと痛くなる」も、決まってはいない。
ただし、同じ研究には、厳しい報告もあります
都合のいいところだけをお伝えするつもりはないので、正直に書きます。
研究を始めた時点で、すでに神経の症状──間欠跛行(少し歩くと足がしびれて、休まないと進めない)や、排尿・排便の異常──があった35人。このうち手術を受けなかった方の83%が、その後、神経症状の悪化を経験しました。研究者は、この方たちの経過を「非常に厳しかった」と報告しています。
論文の結論には、こう書かれています。腰痛が中心の方には保存的な治療が有用である。一方、間欠跛行や排尿・排便の異常といった神経症状がある方には、良い回復が見込めるのであれば、手術が適応となる、と。
つまり、この研究が伝えているのは「すべり症は放っておいていい」ではありません。
腰の痛みと、神経の症状は、分けて考えなさい。 そういうことです。
では、どう分けるのか
排尿・排便の異常、足に力が入らない、足の感覚が明らかに鈍い。 これらは、迷う余地がありません。整体ではなく、すぐに医療機関を受診してください。
では、間欠跛行はどうか。
「歩くと足がしびれて休んでしまう」方が、みなさん手術になるわけではありません。
実際、当院にも、間欠跛行を抱えて来られて、また歩けるようになった方が何人もいらっしゃいます。腰部脊柱管狭窄症の診療ガイドラインでも、重度の場合を除けば、まず運動療法などの保存療法を試すことが勧められています。
ただし、順番があります。
神経の症状が出ているなら、まず病院で検査を受けてください。 どの程度なのか、手術が必要な段階なのかは、画像と診察でなければ分かりません。ここは、私たちがどうこう言える領域ではありません。
そのうえで「まずは保存療法で」と言われた方には、当院にできることがあります。
先ほどの研究が警告しているのは、神経の症状が出ているのに、評価も受けないまま何年も様子を見続けることです。検査を受けたうえで体を整えていくことと、それは、まったく別のことです。
(間欠跛行そのものについては → 「脊柱管狭窄症の考え方」で、診療ガイドラインや研究をもとにくわしくお話ししています)
では、あなたのその痛みとしびれは、いったいどこから来ているのでしょうか。
画像と症状のズレについて、もっと詳しく → ブログ「MRIには写らない|ボルボ賞論文解説」
すべり症の痛みの正体は、「ずれた量」ではなく「がたつき」です
すべり症の痛みの多くは、ずれた距離そのものではなく、その一か所だけが不安定に動いてしまうこと(ぐらつき)から生まれます。ぐらつく場所を守ろうとして周りの筋肉が固まり続け、血の巡りが落ち、神経が引っ張られる。これが痛みとしびれの正体です。ずれた骨は戻せませんが、ぐらつきは減らせます。
長く使った、木の食卓を思い浮かべてください。
脚の一本が、ほんの数ミリ、短くなっている。手を置くたびに、カタン、カタンと鳴る。
このとき、あなたを困らせているのは、「脚が数ミリ短いこと」でしょうか。
違います。困っているのは、「がたつくこと」です。
脚の長さをそろえようと思えば、四本すべてを削り直すしかありません。これが、手術にあたります。大きな工事です。
でも、実際に家庭でやることは、もっと単純です。
折りたたんだ紙を、短い脚の下に挟む。それだけで、テーブルは鳴らなくなる。
脚は短いままです。ずれは、そのままです。それでも、がたつきは消えます。

すべり症の背骨も、これと同じです。
ずれた一か所は、元には戻りません。整体で押し戻すこともできません。ここは、はっきりお伝えします。
けれど、あなたを苦しめているのは、ずれた「距離」ではない。その一か所が、動くたびにわずかに、しかし確実に、ぐらついていることのほうです。
そして、ここからが大切です。
がたつくテーブルの周りでは、何が起きるでしょうか。
家族が、みんなで手で押さえるのです。
腰・お尻・もも裏のこわばりは、すべり症を支え続けた「結果」です
ぐらつく背骨を守るため、腰の深い筋肉(多裂筋)やお尻・もも裏の筋肉が、24時間、力を入れ続けます。固まった筋肉は血の巡りを止め、神経の滑りをじゃまします。すべり症の方に多い腰やお尻、もも裏のこわばりは、原因ではなく、支えを肩代わりし続けた結果なのです。
テーブルががたつくと、そこにいる人は、無意識に手や肘で押さえます。
最初は気になりません。でも、それを一日中、何年も続けたら、どうなるでしょうか。
腕が、パンパンに張ってきます。
背骨も、まったく同じです。
一か所がぐらつくと、体はそれを放っておけません。周りの筋肉を総動員して、固めて守ろうとします。腰の深いところにある筋肉(多裂筋)。お尻の筋肉。もも裏の筋肉(ハムストリング)。
これらが、四六時中、力を入れ続ける。当院では、こうした筋肉を「ガンバリ筋」と呼んでいます。
そして、頑張り続けた筋肉は固まります。固まった筋肉は、中を通る血管を押し潰し、そばを通る神経の滑りをじゃまする。
「腰がいつも張っている」「お尻からもも裏がパンパン」──すべり症の方に、本当によく見られる所見です。
そして、この固まりこそが、「立ちっぱなしがつらい」「続けて歩けない」「ふくらはぎから足の裏がしびれて熟睡できない」といった症状を生んでいます。
腰やお尻のこわばりは、原因ではありません。押さえ続けてきた、結果です。

ゆるむ場所と、固まる場所は、セットで起きます
ここで、当院の考え方に詳しい方は、こう思われるかもしれません。
「整体ポノはいつも、関節の1ミリの遊びが失われることを問題にしているはずだ。すべり症は逆に、ゆるんでいるのではないか」と。
そのとおりです。そして、ここがすべり症を理解する要になります。
実際に起きているのは、1か所だけ遊びが広がり、その代わりに、隣や周りの関節が固まるということです。
がたつくテーブルを想像してください。ぐらつく一か所を庇うために、周りの継ぎ目は、ぎゅっと締め上げられます。動きすぎる場所と、動かない場所。この2つは、いつも背中合わせです。
すべり症の腰では、ぐらつく場所と、固まった場所が、必ずセットで見つかります。
だから当院は、ずれた場所だけを見ません。その周りで、動きを失った関節を探していきます。
なぜ、その一か所だけが押さえ役なのか
いちばん多くすべるのは、腰の下から二番目の骨、第4腰椎(L4)です。ところが、そのすぐ下──いちばん下の第5腰椎(L5)は、めったにすべりません。
理由は、はっきりしています。第5腰椎だけは、腸腰靭帯という太い靭帯で、骨盤にがっちりと縛りつけられているからです。テーブルでいえば、その脚だけが床にボルトで固定されている。
支えがある場所は、ずれない。支えを失った場所が、ぐらつく。

私たちの体は、足首から首まで、一本の鎖のようにつながって動いています(運動連鎖)。足首が硬い、股関節が伸びない、背中が丸い──そのしわ寄せは、鎖のいちばん支えの弱いところに集まります。
そして、本来いちばん内側から支えるべきお腹の奥の筋肉がサボると(サボり筋)、支えを失ったその一か所に、負担が集中していきます。
(サボり筋・ガンバリ筋や運動連鎖のくわしい仕組みは → 「腰痛についての考え方」)
関節の「1ミリの遊び」と痛みの関係 → ブログ「関節機能障害の科学的考察」
すべり症で「腰を伸ばすと痛い」のは、なぜか
腰を反らせると、神経の出口(椎間孔)が一時的に狭くなります。すべり症の方が「腰を伸ばすと痛い・しびれる」と感じるのは、多くがこのためです。ただしこれは、「反り腰だからすべり症になった」「姿勢が悪いから進行する」という意味ではありません。いま症状が出やすい姿勢がわかれば、安全に動ける範囲を確保できます。
すべり症の方が、いちばんよく口にされるのが、この言葉です。
「腰を伸ばすと、腰が痛くて、足がしびれる」
洗濯物を干すとき。高い棚に手を伸ばすとき。まっすぐ立って歩き続けたとき。
理由は、体の構造にあります。
背骨から枝分かれした神経は、椎間孔という隙間を通って足へ向かいます。この隙間は、前かがみになると広がり、腰を反らすと狭くなる。もともと余裕の少ない場所で腰を反らせば、神経の通り道はさらに狭くなります。
だから、腰を伸ばすとしびれる。前かがみだと、少し楽になる。
ここで、大事なことを申し上げます
治療院や情報サイトでは、「反り腰がすべり症を進行させる」といった説明をよく見かけます。
当院は、この言い方をしません。 理由は2つあります。
ひとつは、そこまで言い切れる根拠がないこと。姿勢を整えることですべりの進行が防げた、と示した研究を、私は知りません。そして②でお話ししたとおり、そもそも進行と症状は結びついていませんでした。
もうひとつは、こちらのほうが大切です。
「あなたの背骨はずれている。姿勢が悪いと、もっとずれる」と言われた人は、動くのが怖くなります。
久留米で相談に来られた方が、こうおっしゃったことがあります。「前の治療院で『ずれてるから気をつけて』と言われて、それから掃除機をかけるのが怖くなったんです」と。
痛みが増えたわけではありませんでした。増えたのは、恐怖でした。
怖いから、動かさない。動かさないから、筋肉が弱り、関節が固まる。そして痛みは、むしろ長引く。
私たちがお伝えするのは、こうです。
「いまは、この姿勢でしびれが出ます。だから今日は、この範囲で動きましょう」
進行の話ではなく、いま動ける範囲の話。不安を増やす説明ではなく、今日できることの話です。
(→ ブログ「腰を反らすと痛い本当の理由|5つの原因と対策」)
※少し歩くと足がしびれて歩けなくなり、休むとまた歩ける(間欠跛行)という症状がある方は、すべり症に脊柱管の狭窄が重なっていることが多くあります。②でお話ししたとおり、まずは病院での検査が先です。そのうえで、この症状がどう起こり、なぜ改善しうるのかは → 「脊柱管狭窄症の考え方」でくわしくお話ししています。
すべり症は、いつまでもずれ続けるわけではありません(再安定化)
先ほどの研究チームは、ずれが進まなかった方に共通する特徴も見つけています。椎間板が狭くなり、骨のとげができ、周りが硬くなる──体が自分でその場所を固めていく変化です。研究者はこれを「再安定化」と呼びました(Matsunaga 1990, Spine)。そして10年以上の追跡研究では、この再安定化にともなって腰痛が改善したと報告されています(Matsunaga 2000)。すべり症は、際限なくずれ続ける病気ではありません。
「このまま、ずるずるとずれていって、いつか歩けなくなるのではないか」
これが、すべり症と診断された方が、いちばん深いところで抱えている不安だと思います。
先ほどの研究チームは、その10年前に、もうひとつ大切なことを見つけていました。
ずれが進まなかった人たちを調べると、共通点があったのです。椎間板が狭くなっている。骨のとげができている。周りの骨や靭帯が硬くなっている。
一見すると、どれも「悪くなった所見」に見えます。
でも研究者は、まったく逆の解釈をしました。これは、体が自分でその場所を固めて、ぐらつきを止めようとしている変化ではないか、と。
がたついた継ぎ目を、体が時間をかけて、自分で補強していく。
論文では、これを「再安定化」と呼んでいます。
そして、10年以上の追跡研究の結論には、こう書かれています──腰痛は、再安定化によって改善した、と。
だから、すべり症は、際限なくずれ続ける病気ではありません。むしろ体は、あなたが気づかないところで、ずっとその場所を守ろうとしてきたのです。
もうひとつ、お伝えしておきたいこと
すべり症は、女性に多いことが知られています。デンマークで4,151人を調べた大規模な調査では、男性が2.7%だったのに対し、女性は8.4%でした(Jacobsen 2007)。
そして、この病気を長く研究してきた日本のグループは、もともと全身の関節がやわらかい方に多いことも指摘しています。
つまり──あなたの努力が足りなかったから、こうなったのではありません。 体のつくりや、長い年月の積み重ねが背景にある。それは、あなたの責任ではないのです。
ずれたままでも、すべり症の腰痛・しびれはやわらげられます(ずれは「構造」、痛みの多くは「機能」)
ずれた背骨(構造)そのものは、手技では戻せません。戻せるのは手術だけです。けれども、痛み・しびれ・動きにくさのほとんどは、ぐらつきを支えきれていないこと、筋肉が固まって血の巡りが落ちていること、神経が引っ張られていることといった「機能」の問題です。そして機能は、何歳からでも改善します。だから、ずれたままでも、日常を取り戻される方が少なくないのです。
正直に、はっきりお伝えします。
ずれた背骨を、整体で元の位置に押し戻すことはできません。 骨の位置を変えられるのは、手術だけです。ここは、ごまかしません。
「ボキボキと矯正してずれを戻す」という説明を耳にすることがありますが、当院はそうした施術を行いませんし、そもそも手技で骨の位置が戻ることはありません。
でも、いちばん大切なところは、ここからです。
すべり症では、「変えられないもの」と「変えられるもの」が、はっきり分かれています。
| 構造(変えられないもの) | 機能(変えられるもの) | |
|---|---|---|
| 何を指すか | 骨のずれ、すべりそのもの | 筋肉の固まり、関節の動き、支える力 |
| 変える方法 | 手術のみ | 整体・運動・体の使い方 |
| 痛みとの関係 | 直接の原因ではないことが多い | 痛みやしびれの主な原因(血流の低下・神経の引っ張られ) |
②でお話ししたとおり、ずれの進行と症状は、結びついていませんでした。
③④でお話ししたとおり、痛みを生んでいるのは、ぐらつきと、それを押さえ続けている筋肉と、その中で酸欠になった神経です。
これらは、すべて「機能」の問題です。そして機能は、何歳からでも整えていけます。
当院で良くなった方が、「すべり症が治った」と周りの方に伝えてくださることがあります。とても嬉しいことです。でも、正確に言えば──すべり(構造)は、そのまま。変わったのは、その周りの「機能」のほうなのです。
テーブルの脚は、短いまま。挟んだ支えが、がたつきを止めた。それだけのことです。
「すべり症だから、もう仕方ない」という時代は、もう終わりつつあります。
すべり症に「正しい体操」はあるのか──答えは、もう出ています
50歳以上で第4腰椎・第5腰椎に変性すべり症のある方92人を、体幹を安定させる運動と、腰を丸める運動の2グループに分けて6か月比べた研究では、痛みも生活の障害も両方とも改善し、2つのグループの間に差はありませんでした(Nava-Bringas 2021, Physical Therapy)。「唯一正しい体操」を探すことより、その人が痛みなく続けられるかどうかのほうが大切だ、ということです。
すべり症と診断されると、多くの方が、インターネットで体操を探し始めます。
「腹筋を鍛えないと」「反らすのはダメらしい」「いや、丸めるのが正解らしい」──情報はバラバラで、何が正しいのか、分からなくなってくる。
当院にも、久留米市内やその周辺から、そうやって何年も体操を探してこられた方が、たくさん来られます。
この点について、質の高い研究があります。
50歳以上で、第4腰椎と第5腰椎の間に変性すべり症があり、慢性の腰痛を抱えた92人を、くじ引きで2つのグループに分けました。片方は、体幹を安定させる運動。もう片方は、腰を丸める運動。方向性のまったく違う2つです。
6か月後。
両方のグループとも、痛みも、生活の障害も、はっきり改善していました。そして、2つのグループの間に、差はありませんでした。
これが意味することは、シンプルです。
「唯一の正解の体操」を探す必要はない。大切なのは、その人が痛みを出さずに、続けて動けるかどうか。
だからこそ、順番が大事になります。
痛くて動けない方に、いきなり運動をお願いしても、続きません。
まず、固まった筋肉をゆるめて、痛みなく動ける範囲をつくる。それから、支えになる筋肉を呼び覚ます。
この順番を間違えないことが、当院がいちばん気をつけていることです。
久留米市ですべり症の痛みに悩む方へ|整体ポノのアプローチ
当院が行うのは、2つの段階です。第1段階では、固まった筋肉をゆるめて血の巡りを取り戻し、引っ張られた神経を解放し、関節の動きを回復させて、痛みなく動ける状態をつくります。第2段階では、お腹の奥の支え(腹圧)と、股関節まわりの支える力を取り戻します。支えが戻ると、押さえ役をしていた筋肉が、ようやく力を抜けるようになります。
では、具体的に何をするのか。正直に言えば、特別な魔法はありません。
| 目的 | 行うこと | |
|---|---|---|
| 第1段階 | 手を離せる状態をつくる | 固まった筋肉をゆるめ、血の巡りを取り戻し、神経を解放し、関節の遊び(副運動)を回復させる |
| 第2段階 | 支えを入れ直す | 腹圧リセット呼吸を身につけ、サボっていた股関節まわりの力を取り戻す |
第1段階──手を離せる状態をつくる
まず、押さえ続けて固まった筋肉をゆるめます。腰の深い筋肉、お尻、もも裏。
固まりが取れると、押し潰されていた血管に血が巡り、引っ張られていた神経が解放されます。
同時に、関節そのものの動きを取り戻します。関節には、自分では意識して動かせない、ごくわずかな遊びがあります(副運動)。この遊びが戻ると、動きの偏りが減ります。
ボキボキはしません。痛い姿勢を取っていただくこともありません。
ここまでで、多くの方が「少し動けるようになった」と言われます。
第2段階──支えを入れ直す
痛みが減って動けるようになったら、次は、支えです。
お腹の奥の支え(腹圧)を呼び覚まします。当院がお伝えしているのは、息を吐きながらお腹を膨らませる「腹圧リセット呼吸」です。お腹を凹ませる一般的な方法とは逆で、こちらのほうが全方向に圧がかかり、天然のコルセットとして働きます。
そして、股関節まわりの筋肉です。
すべり症の方には、股関節の前側と外側の筋肉が、縮んで硬くなり、しかも同時に、力を出せなくなっているという状態が、非常によく見られます。
硬いのに、弱い。一見すると矛盾しているようですが、これは押さえ役を長く続けた筋肉に起こる、典型的な変化です。だから、伸ばすだけでも足りず、鍛えるだけでも足りない。ゆるめてから、使えるようにする。 この順番が必要になります。
支えが戻ると、何が起きるか。
押さえ役をしていた腰やお尻、もも裏の筋肉が、ようやく手を離せるのです。
すると、揉んでも取れなかった張りが、自然にゆるんでいく。
がたつくテーブルを、周りの人が手で押さえるのをやめて、テーブルの下に支えを入れる。当院がやっているのは、それです。

(サボり筋・ガンバリ筋や腹圧のくわしい仕組みは → ブログ「マッサージしても戻る本当の原因|サボり筋とガンバリ筋」)
なぜ、当院は「検査」を繰り返すのか
同じ「すべり症」と診断された方でも、どこがぐらつき、どこが押さえ役をしているかは、人それぞれです。だから当院は、施術の前後に、必ず検査をします。
検査して、施術して、もう一度検査する。その場で「この動きで痛みが軽くなったか」「腰を伸ばしたときのしびれが減ったか」を確かめながら、次に手をつけるべき場所を探していく。この地味な繰り返しが、当院のやり方です。
そして、正直にお伝えします。初回の検査だけで、すべてが一度に分かるわけではありません。「原因はここです」と最初から言い切ることもしません。何院も回って、断言されたとおりにしても治らなかった方なら、その難しさを、よくご存じだと思います。
それから、もう一つ正直なお話を。長く押さえ役を続けてきた方ほど、時間はかかります。固まった筋肉が柔らかくなり、サボっていた支えが力を取り戻すまでに、3か月ほどかかることも珍しくありません。「すぐ治ります」とは言いません。
ただ、これは「3か月ずっとつらいまま」という意味ではありません。多くの方は、最初の数回の施術のうちに、「腰を伸ばしたときのしびれが軽くなった」「立っていられる時間が延びた」といった、小さなサインを感じ始められます。その小さな前進の積み重ねが、3か月後のゴールにつながっていきます。
久留米市の患者さまより(脊柱管狭窄症・すべり症)
「脊柱管狭窄症とすべり症と言われました。腰を伸ばすととても痛く、お尻から太ももにかけてのしびれもあり、毎日とてもつらい日々が続いていました。
色々治療院に伺いましたが、どこよりも丁寧に説明してくれて、とても親切でした。施術は正直、こんなので治るのかな?と思うほど軽くなでたりゆらしたりする感じなんですが、魔法みたいによくなっていきました。普通の家でされてるし、最初は少し不安もありましたが、力が入らなかったところも簡単な運動ですぐ力が入るようになって、ほんと不思議でした。
悩んでいる方は、一度相談されたら良いと思います」
※効果には個人差があります。
「魔法みたい」と書いてくださいましたが、魔法ではありません。
押さえ役を続けてきた筋肉が、ようやく手を離せるようになる。すると、眠っていた支えの筋肉に、また力が入るようになる。⑨でお話しした、そのままのことが起きているだけです。
ただ──何年も「年のせい」「様子を見ましょう」と言われ続けてきた方にとっては、それが魔法のように感じられるのだと思います。
実際にあった、改善のケース
理論だけではイメージしにくいと思いますので、実際にあったケースを一つ、ご紹介します(ご本人の了承を得て、要点をまとめています)。
久留米市・60代・女性の方のケース
腰の痛みと、お尻から足にかけてのしびれ。診断は、すべり症でした。
いちばんつらかったのが、腰を伸ばしたとき。まっすぐ立とうとすると腰が痛み、足のしびれが強くなる。病院では電気治療と痛み止めを3か月続けましたが変化がなく、紹介で当院に来られました。
検査をしてみると、体の状態は、はっきりしていました。
お腹の奥の支え(腹圧)が、ほとんど働いていない。股関節の前側と外側の筋肉が、縮んで硬くなっているうえに、力も出せなくなっている。そしてお尻からもも裏にかけての筋肉が強く固まり、腰の深い筋肉も、ずっと張り続けている状態でした。
支えを失った分を、腰とお尻ともも裏が、まるごと肩代わりしていたのです。
まず取りかかったのは、痛みを減らすことでした。
固まった筋肉をゆるめて血の巡りを取り戻し、お尻ともも裏が神経を引っ張っている状態を解除し、関節の動きを回復させていきました。
すると痛みが軽くなり、日常の動作が少しずつできるようになってきました。少しの運動なら、できる状態です。
そこから、第2段階に進みました。
お腹の奥の支えを取り戻し、股関節まわりの筋肉が、また力を出せるようにしていく。
支えが戻るにつれて、腰の深い筋肉も、お尻も、もも裏も、負担が減っていきました。押さえ役から解放された筋肉は、施術を待たずに、自分からゆるみはじめます。そして、さらに楽になっていく。
約3か月で、痛みはほとんどなくなりました。
この方のすべりそのものは、変わっていません。変わったのは、その周りの「支え方」のほうです。
あなたの体にも、まだ手をつけられていない「サボっている支え」や「押さえ続けている場所」が、隠れているかもしれません。
※効果には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。
安全のために|医療機関を優先すべきケース
次のような症状がある場合は、整体よりもまず医療機関での検査をお勧めします。当院でも、これらが疑われる場合は施術を行わず、受診をご案内します。
排尿・排便の異常/足の感覚が明らかに鈍い/足に力が入らない(馬尾症候群の疑い)
じっとしていても痛む、夜間に強くうずく
原因不明の体重減少、発熱を伴う腰痛
転倒・事故のあとの強い痛み
腰の痛みは、その多くが筋肉・関節・神経といった「体を動かす仕組み」から起こります。当院が診るのも、この範囲です。この範囲の痛みであれば、多くの方が、施術を重ねるごとに良い方向へ向かわれます。
ただ、あまり知られていませんが、ごくまれに、腰の痛みの奥に、内臓の病気(腎臓・婦人科系の病気など)や、その他の疾患が隠れていることがあります。これらは画像検査でもすぐには分からないことがあり、私たちも、もちろん診断はできません。
それでも、長年多くの体を診てきた経験から、一つ言えることがあります。
筋肉や関節が原因の痛みなら、施術を重ねるごとに、体は確かに変わっていきます。ところが、別の原因が隠れている場合は、その場で多少楽になっても、すぐに元へ戻ってしまう。改善の手応えが、明らかに伴わないのです。
だからこそ当院では、検査と施術を重ねても改善が見られないとき、「整体で粘る」ことをしません。別の原因が隠れているサインかもしれないと考え、しかるべき医療機関への受診をお勧めします。それも、あなたの体を預かる者の責任だと考えています。
私たちは、「治せること」と同じくらい、「治せないものを見逃さないこと」を大切にしています。
最後に|「ずれているから」と諦める前に
私は、「どんなすべり症でも必ず治します」とは言いません。
でも、なぜ今まで良くならなかったのかを説明できないまま、終わらせることはありません。
ずれた背骨の「位置」そのものは、変えられないかもしれません。それでも、症状の正体である「がたつき」と、それを押さえ続けてきた筋肉の疲れは、支えを入れ直すことで、確かに変えていける。何歳からでも、です。
当院に通われている最高齢の方は、94歳です。
当院には、先払いの回数券はありません。無理に通わせることもしません。通っていただいた分だけ、自然に割引が受けられる仕組みです(6回目で3割引、12回目で半額)。ご相談だけでも、構いません。
筑後川沿いの散歩も、成田山へのお参りも、ゆめタウン久留米での買い物も、もう一度、腰を気にせず楽しめるように。
「自分のすべり症は、どこを支えれば良くなるのか」「整体で対応できる状態なのか」──そんな疑問だけでも、構いません。まずは一度、お聞かせください。
どこに行っても治らなかった方は、どうか最後に、一度ご相談ください。
ご相談のみでも大歓迎です/無理な勧誘は一切行っていません
よくあるご質問
Q. すべり症は、整体で治りますか?
A. ずれた背骨そのもの(構造)は、整体では戻せません。戻せるのは手術だけです。ただし、痛みやしびれのほとんどは、ぐらつきを支えきれていないことや、それを押さえ続けて固まった筋肉、引っ張られた神経といった「機能」の問題で、これは何歳からでも改善します。だから、ずれたままでも症状がやわらぐ方は少なくありません。
Q. すべり症は、これからもっと進行しますか?
A. 手術をせずに10年以上追跡した日本の研究では、ずれが進んだのは34%でした。そして、ずれの進行と症状の変化との間に、相関は認められていません。また、椎間板が狭くなり周りが硬くなることで、体が自分でその場所を固めていく「再安定化」という変化も報告されており、それにともなって腰痛が改善したとされています。すべり症は、際限なくずれ続ける病気ではありません。ただし、すでに間欠跛行や排尿・排便の異常といった神経の症状がある方は別で、まず医療機関での評価が必要です。
Q. 間欠跛行(少し歩くと足がしびれて休んでしまう)があります。整体は無理ですか?
A. いいえ、そうとは限りません。当院にも間欠跛行を抱えて来られ、また歩けるようになった方が何人もいらっしゃいます。腰部脊柱管狭窄症の診療ガイドラインでも、重度の場合を除けば、まず運動療法などの保存療法が勧められています。ただし順番があり、まず病院で検査を受けてください。どの程度なのか、手術が必要な段階なのかは、画像と診察でなければ分かりません。そのうえで「まずは保存療法で」となった方には、当院にできることがあります。逆に、症状が急に進んでいる、休んでも回復しなくなってきた、という場合はすぐに受診をお勧めします。
Q. 「ボキボキ矯正でずれを戻す」と聞きましたが、本当ですか?
A. 手技で骨の位置が戻ることはありません。当院はボキボキする施術を一切行いません。当院が行うのは、ずれを戻すことではなく、その周りの支えを整えて、ぐらつきを減らすことです。
Q. 腰を伸ばすと痛いのですが、反らさないほうがいいですか?
A. 今つらい動きを無理に繰り返す必要はありません。ただし「動かないほうがいい」わけでもなく、動かさないことでかえって筋肉が弱り、痛みが長引くことがあります。大切なのは、痛みの出ない範囲を見つけて、その中でこまめに動くことです。どこまでが安全な範囲かは人によって違うため、検査で確かめるのが近道です。
Q. 分離すべり症と言われました。このページは当てはまりますか?
A. 分離すべり症は、若い頃の疲労骨折が土台になっている点で、中高年の変性すべり症とは成り立ちが異なります。ただし「ずれた一か所がぐらつき、周りの筋肉が支えを肩代わりして固まる」という体の反応そのものは共通しています。当院が整えるのも、その支え方の部分です。ご自身がどちらのタイプかは、病院の診断書や画像所見で確認できます。分からない場合は、ご相談の際にお持ちください。
Q. 「手術しかない」と言われました。避けられますか?
A. 症状によって答えが変わります。腰の痛みや張りが中心の方については、まず体を整えるケアを試し、それでも難しいときの選択肢として手術を考える、という順番が現実的です。一方、排尿・排便の異常や、足に力が入らないといった症状がある場合は、手術が必要になります。10年以上の追跡研究でも、こうした神経の症状がありながら手術を受けなかった方の多くが、その後悪化したと報告されています。ご自身がどちらに近いかは検査でお伝えできますし、そのうえで医療機関の受診をお勧めすることもあります。
Q. どのくらい通えば良くなりますか?
A. 個人差があります。長く押さえ役を続けてこられた方は、固まった筋肉が柔らかくなり、支える力を取り戻すまでに3か月ほどかかることも珍しくありません。ただし「3か月ずっとつらいまま」ではなく、多くの方は最初の数回で「腰を伸ばしたときのしびれが軽くなった」などの小さな変化を感じ始められます。
Q. 整形外科に通いながらでも受けられますか?
A. まったく問題ありません。病院は「形(構造)」を診る専門家、当院は「働き(機能)」を診る専門家です。役割が違うだけで、対立するものではありません。むしろ、病院で重大な病気がないか検査を受けた上で来ていただくのが、いちばん安心です。
本ページで引用した研究
Matsunaga S, Ijiri K, Hayashi K. Nonsurgically managed patients with degenerative spondylolisthesis: a 10- to 18-year follow-up study. J Neurosurg. 2000;93(2 Suppl):194-198. doi:10.3171/spi.2000.93.2.0194
Matsunaga S, Sakou T, Morizono Y, Masuda A, Demirtas AM. Natural history of degenerative spondylolisthesis. Pathogenesis and natural course of the slippage. Spine. 1990;15(11):1204-1210. doi:10.1097/00007632-199011010-00021
Nava-Bringas TI, Romero-Fierro LO, Trani-Chagoya YP, Macías-Hernández SI, García-Guerrero E, Hernández-López M, Coronado-Zarco R. Stabilization Exercises Versus Flexion Exercises in Degenerative Spondylolisthesis: A Randomized Controlled Trial. Phys Ther. 2021;101(8):pzab108. doi:10.1093/ptj/pzab108
Jacobsen S, Sonne-Holm S, Rovsing H, Monrad H, Gebuhr P. Degenerative lumbar spondylolisthesis: an epidemiological perspective: the Copenhagen Osteoarthritis Study. Spine. 2007;32(1):120-125. doi:10.1097/01.brs.0000250979.12398.96
日本整形外科学会/日本脊椎脊髄病学会 監修『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)』南江堂
※本ページは情報提供を目的としたものであり、診断・治療行為ではありません。症状が強い場合や急に悪化する場合は、医療機関をご受診ください。
「分離症」と「すべり症」の違いについて
若い頃の腰椎分離症がそのまま残り、後年になってすべり症へ進むケースがあります(分離すべり症)。「昔、分離症と言われた記憶がある」という方は、あわせてこちらもご覧ください。
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