久留米市の腰痛専門整体院 整体ポノの髙田です。
「朝、靴下を履こうとした瞬間、腰にビキッと走る」 「片足を上げた途端、腰が固まって動けなくなる」 「靴下を履くためだけに、毎朝ベッドの縁に座り直している」
当院に来られる患者さんの中で、「靴下を履くときに腰が痛い」という訴えは驚くほど多いです。そして、ほとんどの方がこう思っています——「腰が悪いから、靴下が履けない」。
でも、実は逆です。 靴下を履く動作は、あなたの体が出す”不合格通知”。腰が悪いのではなく、全身の連携テストに落ちているのです。
ただし、不合格といっても、あなたの体が壊れてしまったわけではありません。これは「腰の病気」ではなく、一時的な「動きのエラー」が起きているだけです。正しい動きを再学習してやり直せば必ず合格できますので、安心してください。
【結論】
靴下を履くと腰が痛い原因は、「腰の病気」ではなく全身の協調運動の破綻です。靴下を履く動作は腰椎の可動域の約90%を一気に使う「全身テスト」であり、股関節の外旋・片脚バランス・体幹の安定という3つの項目のうち、どこかが不合格になると、すべてのしわ寄せが腰に集中します。久留米市で靴下の腰痛にお悩みの方は、「どこが不合格か」を知ることが改善への第一歩です。
なぜ靴下だけが、こんなに痛いのか
【結論】
靴下を履く動作は「ただの前屈」ではなく、「片脚立ち+前屈+回旋」の三次元複合動作です。腰椎の可動域の約90%を一気に使うこの動作は、日常生活の中で腰に最も厳しい全身テストであり、痛みが出るのは「テストの不合格」を意味しています。

「前かがみ」で腰が痛くなる動作は、洗顔、物を拾う、草むしりなど、日常にたくさんあります。でも、靴下だけは別格に痛い——そう感じている方は多いはずです。
それには明確な理由があります。
洗顔や物を拾う動作は、基本的に**「両足で立ったまま前に倒れる」**だけです。シンプルな一方向の動きです。
ところが靴下を履く動作は、まったく別物です。
片脚で全体重を支えながら、もう片方の足を持ち上げ、股関節を深く曲げつつ外側にひねり、同時に体幹を前に倒して手を足先に届かせる。
つまり、靴下は「前屈」ではなく「片脚立ち+前屈+回旋」という三次元の複合動作なのです。
専門的な言葉で言えば、この動作は複数の関節がバトンを渡すように連動する「運動連鎖(キネマティックチェーン)」が完璧に機能して初めて成り立ちます。ある研究では、靴下を履く動作で腰椎の可動域の約90%が使われることが報告されています。日常生活の中で、腰をここまで限界近くまで使い切る動作は、ほとんどありません。
だから靴下は特別に痛い。 そして、だからこそ靴下は——あなたの体の「どこが崩れているか」を正直に教えてくれる、最も精密な全身テストでもあるのです。
(→ 関連記事:前かがみで腰が痛い原因は「腰」じゃない|4つの理由と根本改善)
「靴下テスト」の3つの採点項目
【結論】
靴下テストの採点項目は3つ。①股関節の「外旋」が足りない、
②片脚バランスが崩れている、
③「手を伸ばす」履き方が定着している。
当院で靴下の腰痛を訴える方を全身評価すると、不合格項目はほぼこの3つに集約されます。
では、靴下テストで体は何を採点されているのか。当院の臨床経験から、不合格になっている項目はほぼ3つに集約されます。
項目1——股関節の「外旋」が足りない
靴下を履くとき、足をどう持ち上げていますか?
痛くない人は、膝を外側に開きながら足を自分のほうに引き寄せています。この動きの主役は股関節の「外旋(がいせん)」——太ももの骨を外側にくるっと回す動きです。
ところが、長時間の座位や車移動の多い生活(久留米は車社会ですから、ほとんどの方が該当します)を続けていると、股関節の外旋可動域はどんどん狭くなります。お尻の深層にある筋肉が硬く縮み、太ももが外に開かなくなるのです。
股関節が外に開かないとどうなるか。足先に手が届かないので、体のほうを「余計に前に倒す」しかなくなります。つまり、股関節のサボりのツケは、すべて腰の過剰な働きとして支払われるのです。
前屈動作の研究では、腰痛患者は健常者と比べて股関節の可動域が約20度も制限されていることが報告されています(※1)。この「20度の借金」を、毎朝の靴下で腰が肩代わりしています。
股関節の外旋テスト:椅子に座った状態で、片方の足首をもう片方の膝の上に乗せてみてください(「4の字」の形です)。膝が水平近くまで外に開けば合格。膝が上に突き上がったまま下がらない方は、この項目が不合格の可能性大です。
項目2——片脚バランスが崩れている
靴下を履くとき、多くの方は立ったまま片足を上げて履こうとします。
この瞬間、体重は片方の脚に100%集中しています。そして、上げた脚の重さと前に倒れた上半身の重さを支えるために、骨盤は支持脚側に大きく傾きます。
骨盤が傾くと、腰の骨には左右非対称な剪断力(せんだんりょく:横にずらす力)がかかります。前からの圧縮力だけなら腰はそこそこ耐えられるのですが、「圧縮+剪断+回旋」の三方向の力が同時にかかると、一気に危険な負荷領域に入ります。
この片脚バランスを安定させる主役が、お尻の横側にある中殿筋です。しかし、座りすぎの生活ではこの筋肉がすっかりサボり筋になってしまいます。サボり筋の中殿筋では骨盤を水平に保てず、靴下を履くたびに腰が左右にグラグラ揺れる。その不安定さを脳が「危険だ」と判断し、腰の周りの筋肉にガチガチに固める命令を出します。
「靴下を履くとき、なぜか体がこわばる」——あの感覚は、脳が出した緊急ブレーキです。
片脚バランステスト:靴下を履かずに、片脚で10秒間立ってみてください。目を開けたままでOKです。骨盤がグラグラする、反対側に大きく傾く、すぐに足をついてしまう方は、この項目が不合格です。
※「右足を上げるときだけ痛い」「左腰だけ痛い」という左右差に悩む方は、まさにこの片脚バランスの崩れによる「左右非対称な負荷」が真犯人です。
▼H3:項目3——「足を持ち上げる人」と「手を伸ばす人」の違い
ここが、最も見落とされやすいポイントです。
靴下を履く人には、大きく分けて2つのタイプがいます。
**タイプA:足を自分のほうに持ち上げる人。**膝を曲げて足を引き寄せ、あまり体を前に倒さずに靴下に手を伸ばす。
**タイプB:手を足先に向かって伸ばす人。**足はほとんど動かさず、上半身を大きく前に倒して足先まで手を届かせようとする。
タイプAは、股関節が仕事をしている。 タイプBは、腰が身代わりになっている。
タイプBの方は、靴下を履くたびに腰を限界近くまで屈曲させています。この姿勢では、背骨のクッション(椎間板)の前方に強い圧縮力がかかり、内部のゼリー状の組織(髄核)が後方——つまり神経の方向に押しやられます。研究データでは、立って前屈した姿勢では、リラックスした立位(0.50MPa)の約2.2倍にあたる1.10MPaの圧力が椎間板にかかることが計測されています(※2)。
このように、前かがみになることで痛みが増悪する状態を、専門的には「屈曲不耐性腰痛(くっきょくふたいせいようつう)」と呼びます。タイプBの「手を伸ばす」履き方は、一見ラクに見えて、自らこの過酷な屈曲不耐性の状態を作り出しているのです。
しかも、タイプBの方の多くは背中の筋肉が「休めない状態」になっています。健康な体には、深く前屈したときに背中の筋肉が自動的にオフになる省エネ機能が備わっています。ところが慢性的な腰痛がある方ではこの機能が壊れ、前屈中も背中の筋肉が力みっぱなしになっている。力みっぱなしの筋肉は自分自身の血管を締め上げ、酸欠に陥り、痛み物質を溜め込みます。
(→ 関連記事:なぜ痛みは消えないのか?「神経の酸欠」と「センサーの誤作動」を生理学から解説)

あなたはどちらのタイプ?:明日の朝、靴下を履くとき、自分の動きを意識してみてください。「足を引き寄せているか」「体を前に倒しているか」。家族に横から見てもらうと、もっとはっきりわかります。体を大きく前に倒しているタイプBの方は、この項目が不合格です。
「朝の靴下」が特に痛い、たった一つの理由
【結論】
朝の靴下が特に痛いのは、「体が目覚めていないから」ではありません。夜の間に椎間板が水分を吸収して膨張し、1日で最も内圧が高い状態で、腰椎の可動域の90%を使う動作を行っているためです。

「朝は特に痛いけど、夜はそうでもない」。当院でもよく聞く訴えです。
これには科学的な理由があります。
椎間板は約75%が水分でできた組織です。夜、横になっている間に椎間板は水分をたっぷり吸収して膨らみます。この膨張は実測可能で、朝と夜であなたの身長は約1.5cm違います(朝のほうが高い)。
水分をたっぷり含んだ朝の椎間板は、パンパンに膨らんだ水風船のような状態です。この状態で前屈すると、椎間板の内圧は乾いた状態(夜)よりもさらに高くなります。
つまり、朝の靴下は——1日の中で椎間板への圧力が最も高い時間帯に、腰椎の可動域の90%を使う動作を行っているということなのです。
朝の靴下が特に痛い方は、「体が目覚めていないから」ではなく、椎間板の物理的なコンディションが最も不利なタイミングで全身テストに挑んでいた——それが本当の理由です。
(→ 関連記事:水と腰痛|椎間板の「充電サイクル」を最新研究で解説)
「座って履けばいい」は、半分だけ正解
【結論】座ることで片脚バランスの問題は解消されますが、座り方を間違えると骨盤が後傾し、腰だけで屈曲する「タイプB」が強制発動されます。正解は「座る」ではなく「座り方を変える」ことです。
「立って履くから痛いんでしょ? 座って履けばいいじゃない」
ご家族にそう言われたことがある方、多いのではないでしょうか。確かに、座れば片脚バランスの問題は解消されます。項目2のテストからは解放されます。
ただし、座って履くことで別の問題が新たに発生する場合があります。
座位では、骨盤が後ろに倒れやすくなります。骨盤が後傾した状態で靴下を履こうと体を前に倒すと、股関節ではなく腰椎だけで屈曲する——つまり、項目3の「タイプB(手を伸ばす)」が強制的に発動されてしまうのです。
研究データでは、座位で最大限に前屈した姿勢の椎間板内圧は0.83MPaと報告されています(※2)。一方、立位での前屈は1.10MPa。数字だけ見れば座位のほうが低いのですが、座位では骨盤の逃げ場がない分、腰椎の特定の一カ所に負荷が集中しやすくなります。
ここで大切なのは、Nachemsonという先駆的な研究者自身が「内圧が高い=痛い、ではない」と警告している点です。内圧の絶対値よりも、その負荷が腰の一カ所に集中しているかどうかが痛みを左右します。低い椅子やソファに深く座って靴下を履く姿勢は、まさにこの「集中負荷」を作り出してしまうのです。
座って履く場合の正解は、**ただ座るのではなく「座り方を変える」**こと。具体的な方法は、次の章でお伝えします。
今日から変えられる——「靴下の履き方改革」3つの実践
【結論】
靴下の腰痛は「履き方」を変えるだけで軽減する可能性があります。ポイントは3つ。
①「4の字」で足を引き寄せる、
②座面の高さを膝より高くする、
③履く前に5秒間の腹圧スイッチを入れる。施術を受ける前でも、明日の朝から試せます。
施術を受ける前でも、靴下の履き方を変えるだけで朝の痛みが軽減する可能性があります。痛みが増す場合は中止し、無理のない範囲で試してみてください。

▼実践1——「4の字」で足を引き寄せてから履く
椅子やベッドの縁に、やや浅めに腰かけます。背すじは自然に伸ばしたまま(猫背にならないのがポイント)。履きたい側の足首を、反対の膝の上に乗せます(「4の字」の形)。
(画像より膝は横に倒れます)
この姿勢のメリットは3つあります。
第一に、股関節の外旋を使って足を引き寄せるため、腰をほとんど前に倒さずに足先に手が届きます。第二に、座っているので片脚バランスの不安定さがゼロ。第三に、骨盤が前傾位を保ちやすいため、腰椎の過剰な屈曲を防げます。
「4の字が組めない」という方は、項目1(股関節の外旋不足)が深刻なサインです。無理に組もうとせず、次の実践2を試してください。
**正しくできているサイン:**足首を膝に乗せた瞬間、上半身をほとんど前に倒さなくても足先に手が届く。腰に「いつもの嫌な感じ」が出ない。
**やめるべきサイン:**4の字を組もうとしたときに股関節や膝にピリッとした鋭い痛みが出る場合は中止してください。
▼実践2——椅子の高さを「膝より腰が高い」にする
低い椅子やソファに深く座って靴下を履くと、骨盤が後ろに倒れ、腰椎が丸まった状態で前屈することになります。
ダイニングチェアやベッドの縁など、座面が膝の高さよりやや高い場所に座ってください。太ももが水平か、わずかに前下がりになる高さが理想です。この座面の高さだけで、骨盤が前傾しやすくなり、股関節から体を折りたたむ動きが自然に出てきます。
久留米のご自宅で試す場合、和室の座椅子やこたつの前で履いている方は特に注意してください。床に近い低い座面は、骨盤の後傾を最も誘発しやすい環境です。玄関に小さな椅子を一つ置くだけで、毎朝の靴下が変わります。
**正しくできているサイン:**座ったとき、太ももが水平か、わずかにつま先側が下がっている。前かがみになるとき、お腹と太ももが近づく感覚がある(=股関節から折れている証拠)。
**やめるべきサイン:**座面が高すぎて足が浮いてしまう場合は高さを調整してください。不安定な姿勢は逆効果です。
▼実践3——履く前に5秒「腹圧スイッチ」を入れる
靴下を持ったら、履く前にフーッと息を吐きながらお腹を外側に膨らませてください。5秒間、お腹に圧をかけた状態をキープ。そのまま足を引き寄せて靴下を履きます。
これは当院が一貫してお伝えしている天然のコルセット(腹横筋)の起動法です。一般的なドローイン(お腹を凹ませる方法)とは逆で、吐きながら膨らませることで全方向に腹圧がかかり、天然のコルセットが起動します。
腹圧が入った状態で靴下を履くと、腰椎がしっかり内側から支えられるため、前に倒れたときの「グラッ」とする不安定感が明らかに減ります。
(→ 腹圧呼吸の詳しいやり方は:マッサージしても戻る「本当の原因」はお腹の筋肉がサボっていること)
**正しくできているサイン:**お腹を膨らませた瞬間、腰回りに「ベルトをキュッと締めた」ような安定感を感じる。靴下を履く動作中、いつもよりこわばりが少ない。
**やめるべきサイン:**この動作で腰や脚に痛みやしびれが強くなる場合は中止し、当院のLINEからご相談ください。
※3つの実践を試しても痛みが変わらない、あるいは「右だけ極端に痛い」など左右差が強すぎる場合は、すでに関節の「遊び」が完全に消失しているサインかもしれません。無理をせず、まずは当院のLINEからお気軽にご相談ください。
【改善例】靴下が履けなかった70代男性——不合格項目は「全部」だった
【結論】
3年間自力で靴下を履けなかった70代男性が、3つの不合格項目をひとつずつ合格にしていくことで、3回目の施術で自力での靴下が可能になりました。MRIの画像所見は変わっていません。変わったのは「機能」です。
Yさん(仮名・70代・久留米市在住)は、「もう3年くらい、立って靴下を履けていない」という状態で来院されました。毎朝、奥さんに靴下を履かせてもらうのが申し訳なくて、整形外科を受診。MRIでは「L4/L5の変性と軽いすべり症」と診断され、「年齢的なものですから」と湿布を処方されていました。
「妻に迷惑をかけたくない。でも、自分では履けない。成田山の初詣でも、階段の下で靴を脱いだり履いたりするのに人の手を借りなきゃならない。それが一番つらかった」——Yさんはそう話されました。
初回の全身評価で見つかった不合格項目は、3つすべてでした。
**項目1:股関節の外旋が左右とも著しく制限。**4の字が組めない状態。長年の車通勤と退職後のテレビ生活で、お尻の深層筋が完全にサボり筋化していました。
**項目2:片脚立ちが3秒しか持たない。**中殿筋の筋力低下と、仙腸関節の副運動が消失しており、骨盤を水平に保てない状態。
**項目3:典型的なタイプB。**足を引き寄せる動きがまったく出ず、上半身を大きく前に倒して手を伸ばすパターンが完全に固定化していました。
アプローチは「腰に直接触れない」ところから始めました。まず両側の股関節の構成運動・副運動で外旋の可動域を回復。次に仙腸関節の遊びを復元し、中殿筋が正常なタイミングで働ける土台を作りました。3回目からは「4の字で靴下を履く」動作を実際に練習。息を吐きながらお腹を膨らませる腹圧呼吸と組み合わせて、靴下動作そのものの再学習を行いました。
3回目:「昨日、初めて自分で靴下を履けました。妻が驚いていました」
5回目:「朝の支度が怖くなくなった。玄関で靴を履くのも自分でできる」
7回目:「成田山に初詣に行ったとき、階段の下で靴を脱ぎ履きするのがスムーズだった。嬉しかった」
MRIに映っていた「L4/L5の変性とすべり症」は変わっていません。変わったのは、股関節と骨盤の機能、そして靴下の履き方そのものです。3年間「年齢のせい」で片付けられていた靴下の痛みは、3つの不合格項目をひとつずつ合格にしていくことで解消しました。
※個人の感想であり、効果には個人差があります。
整体ポノのアプローチ——「不合格項目」をひとつずつ合格にする
【結論】当院では靴下の腰痛に対して「腰を揉む」ことはしません。まず全身評価で3つの不合格項目のどこが原因かを特定し、関節の調整→神経の安定→血流の回復という三位一体のアプローチで、一つずつ合格ラインまで引き上げます。
当院では、靴下の腰痛に対して「腰を揉む」ことはしません。
最初に行うのは、あなたの体が靴下テストのどの項目で不合格になっているかの全身評価です。股関節の外旋はどこまで出るか。片脚立ちで骨盤はどちらに傾くか。靴下を履く動作パターンはタイプAかタイプBか。不合格の項目は人によって1つのこともあれば、Yさんのように全部のこともあります。
不合格の原因を特定したら、三位一体のアプローチで合格ラインまで引き上げます。
一:関節の調整(構成運動・副運動の回復)——股関節や仙腸関節に存在するミリ単位の「遊び」を、ソフトな手技で復元します。関節に遊びが戻ると、股関節の外旋可動域が即座に拡大し、「4の字が組めなかった人が、その場で組めるようになる」ことも珍しくありません。バキバキと鳴らすような力は一切使いません。
二:神経の安定(脳のアラート解除と滑走性の獲得)——長期間痛みが続いていた方は、脳が「靴下を履く=危険」と過敏に学習してしまっています。関節の遊びを回復した上で、痛くない範囲で靴下動作を繰り返すことで、脳に「この動きは安全だ」という新しい情報を入力し、過剰な防御反応を解除します。また、無理な前屈姿勢で引き伸ばされ、筋肉に癒着してしまった神経(滑走不全)を優しく解放し、引っ張りストレスを取り除きます。研究では、徒手療法による触圧覚の入力が脊髄レベルで痛みの信号をブロックし、同時に脳幹の疼痛制御中枢を活性化させることで、体内の天然鎮痛物質の放出が促されることが確認されています(※3)。
三:血流の回復(ガンバリ筋の酸欠解消)——サボり筋の代わりに過労していたガンバリ筋(脊柱起立筋や多裂筋)の過緊張を解除し、圧迫されていた毛細血管の血流を再開させます。酸欠状態から解放された筋肉は、靴下動作中にようやく「休むべきタイミングで休む」ことができるようになります。
施術後に最も重要なのは、実際の靴下動作でタイプA(足を引き寄せる)の動きを定着させることです。股関節が動くようになっても、脳に染みついた「タイプBの動作パターン」は自動的には書き換わりません。施術で関節と筋肉の準備を整えた上で、新しい動作パターンを練習して初めて、朝の靴下が変わります。
なお、当院のアプローチは整形外科での治療と競合するものではなく、互いに補い合う関係にあります。病院が担う「構造の診断と治療」と、当院が担う「機能の評価と改善」。両方を併用されている患者さんも多くいらっしゃいます。
(→ 関連記事:関節機能障害——画像診断の死角に存在する「痛みの正体」)
靴下の腰痛に関するよくある質問(Q&A)
- Q靴下を履くときだけ痛いのは、軽症ということですか?
- A
必ずしもそうとは限りません。靴下動作は腰椎の可動域の約90%を使う高負荷の全身動作です。「靴下のときだけ痛い」は、体がギリギリ持ちこたえている状態を意味しています。放置すると、洗顔や階段など他の動作にも痛みが広がるケースは珍しくありません
- Q靴下用の「ソックスエイド」を使っていますが、それでいいですか?
- A
急性の痛みが強い時期は、ソックスエイドのような補助具で腰への負荷を減らすことは合理的です。ただし、長期間使い続けると股関節の外旋や片脚バランスをさらに使わなくなり、不合格項目がどんどん悪化するリスクがあります。補助具は「一時的な松葉杖」として使い、並行して不合格項目を改善していくことが大切です。
- Q足のほうまで痺れるような痛みがあるんですが…
- A
骨盤(仙腸関節)のバランスが崩れて機能障害を起こすと、脳が「お尻や足の痛み」と勘違いして痛みを飛ばす現象(関節原性関連痛)が起きることがあります。また、靴下を履くときの無理な前屈姿勢で、神経そのものが周囲の筋肉に癒着してスムーズに滑れなくなっている(滑走不全)ケースも考えられます。いずれも当院の全身評価で特定可能です。
- Q股関節のストレッチをすれば4の字が組めるようになりますか?
- A
柔軟性の改善は重要ですが、それだけでは不十分なことが多いです。股関節の外旋制限は、筋肉の硬さだけでなく関節そのものの「遊び」の消失が原因になっていることがあります。当院では、構成運動・副運動で関節の遊びを回復させた上で、ストレッチの効果が最大限に引き出される状態を先に作ります。
- Q整形外科で「すべり症」と言われました。靴下は諦めるしかないですか?
- A
画像に映るのは「構造(形)」であり、「機能(動き)」は映りません。腰痛のない60代の方でもMRIで88%に椎間板変性が見つかるという大規模研究があります。画像上の変化があっても、股関節や骨盤の機能が回復することで靴下が自力で履けるようになった方を、当院では数多く経験しています。
- Q何回くらい通えば靴下が自分で履けるようになりますか?
- A
不合格項目の数と慢性化の程度によって個人差がありますが、多くの方が3〜5回で「靴下を履くときの恐怖感が減った」と実感されています。先ほどのYさん(70代)のケースでは、3回目で自力での靴下が可能になりました。初回の全身評価後に、お体の状態に合わせた見通しをお伝えしています。
- Q整形外科に通っていても受けられますか?
- A
はい。整形外科での画像検査と医学的管理は非常に大切です。その上で、画像に映らない「股関節の外旋制限」や「中殿筋の不活性化」といった機能面のケアを当院で並行されている方は多くいらっしゃいます。主治医の先生の治療と当院のアプローチは役割が異なるため、併用が可能です。
まとめ——靴下が履ける朝を取り戻すために
靴下を履くと腰が痛い。それは「腰が悪い」のではなく、体が3つの項目で不合格になっているサインです。
- 股関節の外旋が足りず、足を引き寄せられない
- 片脚バランスが崩れ、骨盤が不安定になっている
- 「手を伸ばす」履き方が定着し、腰が全負荷を背負っている
そしてこれらの不合格は、「体が壊れた」わけではなく、座りすぎや運動不足で起きた**「機能と動きのエラー」**です。 機能の問題だからこそ、必ず改善できます。
まずは明日の朝、靴下を履くとき、自分の動きを観察してみてください。足を引き寄せていますか? それとも手を伸ばしていますか? その気づきだけで、もう改善は始まっています。
「自分の不合格項目はどこだろう?」 気になった方は、まずはLINEでお気軽にご相談ください。ご来院前に、あなたの状態について一緒に整理するところから始められます。
※ご相談のみでも構いません。無理な勧誘は一切行っていません。
【専門用語のやさしい解説】
記事内で登場した少し難しい言葉を解説します。
運動連鎖(キネマティックチェーン):体の動きは一つの関節だけで行われるのではなく、足首→膝→股関節→骨盤→腰……と、複数の関節がバケツリレーのように連動して動く仕組みのことです。この連携が崩れると、特定の場所(腰など)に負担が集中します。
股関節の外旋(がいせん):太ももの骨を外側にくるっと回す(膝を外に開く)動きのことです。あぐらをかく動きもこれにあたります。
剪断力(せんだんりょく):物を横にズラすように働く力のことです。背骨は上からの重さには強いですが、横にズレるようなこの剪断力には非常に弱く、痛みの原因になりやすいです。
椎間板内圧/髄核(ずいかく):背骨と背骨の間にあるクッション(椎間板)の中にかかる圧力のこと。髄核はその中心にあるゼリー状の組織で、圧力がかかると前後左右に移動します。
屈曲不耐性腰痛(くっきょくふたいせいようつう):腰を丸める(前かがみになる)動作によって痛みが増すタイプの腰痛のことです。靴下を履くタイプBの方がまさにこの状態です。
関節の遊び(構成運動・副運動):関節の中にある、自分の意志では動かせない1〜2mmのわずかな「ゆとり」のこと。これが失われると、ドアの蝶番がサビついたように体の動きが極端に悪くなります。
滑走不全(かっそうふぜん):神経が周りの筋肉などの組織にベタッと癒着してしまい、体を動かしたときにスルスルと滑らなくなった状態のことです。神経が無理に引っ張られるため、鋭い痛みやしびれが出ます。
サボり筋・ガンバリ筋:お腹の奥の筋肉(腹横筋など)が仕事を「サボる」ことで、代わりに背中や腰の筋肉が過労状態になり「ガンバりすぎる」現象のことです。 ===専門用語のやさしい解説ここまで===
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参考文献 ※1 Kim SH, et al. 股関節と腰椎の運動連鎖(前屈時痛)に関する運動学的解析。腰痛患者の股関節屈曲可動域が健常者と比較して約20度制限されていることを報告。 ※2 Wilke HJ, et al. “New in vivo measurements of pressures in the intervertebral disc in daily life.” Spine. 1999. DOI: 10.1097/00007632-199904150-00005(立位前屈1.10MPa、座位最大屈曲0.83MPa、リラックス立位0.50MPa等の椎間板内圧データ) ※3 Bialosky JE, et al. “The mechanisms of manual therapy in the treatment of musculoskeletal pain: a comprehensive model.” Man Ther. 2009. DOI: 10.1016/j.math.2008.09.001(徒手療法の神経生理学的鎮痛メカニズム) ※4 Callaghan JP, McGill SM. “Intervertebral disc herniation: studies on a porcine model exposed to highly repetitive flexion/extension motion with compressive force.” Clin Biomech. 2001.(22,000〜28,000回の微小負荷屈曲反復による椎間板損傷モデル) ※5 Shojaei I, et al. 急性腰痛患者の体幹キネマティクス研究。IMUを用いた計測で腰痛患者の腰椎屈曲ピーク角速度の低下と骨盤回旋の増大を報告。2017年。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、診断・治療行為ではありません。症状が強い場合や急激に悪化する場合は、医療機関へのご受診をお勧めします。


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